西国(5) 1041本の手を持つ文字通りの千手観音 葛井寺
癒しのポイント
葛井寺のポイントは、国宝でもある十一面千手千眼観世音菩薩座像でしょう。胸の前で2本の手が合掌しており、背後には実に1039本もの手があります。合計すると1041本。その手の全てには目が描かれているということです。秘仏とされていますが、毎月18日に開帳されお姿を見ることが出来ます。
実は、千手観音の手の本数は、いくつかのバリエーションがあり、1000本ではなく、42本の千手観音がよく見られます。胸の前で2本の手が合掌しており、背後に40本の手が伸びている姿です。千手観音は1本の手で、天上界から地獄界まで25の世界を40回救うとされており、背後に40本の手がありますので、世界を25×40=1,000回も救ってくださるそうです。
葛井寺の千手観音は本当に1000本を超える手がありますので、そのご利益はとても大きなものでしょうが、参拝をすると、欲深い思いになるよりも、逆に身が引き締まる気になります。
あかん河内の葛井寺 伝説
葛井寺には、”あかん河内の葛井寺”という呼び名があります。かつて河内(今の大阪府東部で藤井寺市を含みます)で名を馳せていた藤井安基と言う荒くれ者が、死んで地獄で苦しんでいる時に、千手観音が現れて「人の為に尽くすように」とお告げをして、葛井寺の境内に生き返らせたそうです。そこで改心した藤井安基は、当時廃れていた葛井寺を再興に尽くしたとのことです。
藤井安基のような、あかん(だめという大阪弁)男でも、観音菩薩は救ってくれるとして、信仰を集めたということです。
ちなみに、この藤井安基の功績をたたえて、この地を「藤井」寺と称するようになったと言われています。
お寺への行き方
最寄り駅は近鉄南大阪線の藤井寺駅。JRとの接続駅の阿部野橋駅(JR天王寺駅の道路を挟んだ向かい側です)から、準急で15分弱。とても便利な場所にあります。藤井寺駅は、急行や特急は停車しませんので要注意です。藤井寺駅からは商店街を抜けて300m、徒歩で5分の距離です。
かつて存在したプロ野球球団の近鉄バッファローズの本拠地、藤井寺球場がありましたが、いまは取り壊されて学校になっています。
参拝の記録
東大寺の大仏建立を指揮したと言われている行基の開創と伝えられています。もともとは、7世紀ごろにこの地域にいた豪族の葛井連(ふじいのむらじ)の氏寺だったとも伝えられています。後の世で廃れてしまった葛井寺を再興したのが、「あかん河内の・・」で登場した藤井安基です。
立派な山門(南大門)が本堂の正面にあります。朱の色が褪せていますが、風格のある堂々たる門です。
本堂には、本尊として十一面千手千眼観世音菩薩坐像がお祀りされています。普段は見ることが出来ませんので、毎月18日のご開帳時にお参りすることをお勧めします。横には納経所も併設されていて、こちらで御朱印を頂くことが出来ます。
境内は小ぶりですが、かつては2キロ四方にも及ぶ広大な敷地に、2塔7堂を擁する伽藍があったそうです。いまでも、護摩堂、阿弥陀堂、弘法大師堂があります。
もう一つの山門である四脚門は、豊臣秀頼が建立したと伝えられており、重要文化財に指定されています。藤井寺駅から歩くと、まずこの四脚門が出迎えてくれます。元々は、南大門として建立されたそうですが、後にここに移築されたとのこと。
御朱印は「大悲殿」(大悲殿は観音菩薩のいらっしゃる場所と言う意味)。